パンツ

新世界の店と自宅の間には逢坂があり、逢坂を上り詰めた辺りに小汚い店(4階ビルの1階部分)がある。

客がいるのを見たことのない店、デスカウントショップである。

交通量の多い車道沿いにあるせいか、陳列されている物はほこりっぽく小汚い。

この店の側を通る時はいつも中を覗いて通る。

何となく興味を引かれるのである。

こんなに暇な店をやっていて飯が食べられるのだろうか。

どんな人が店をしているのだろうかと。

もし賃貸のビルだったら、家賃が払えるのだろうかと。

自前のビルだったら、税金逃れに赤字の店をしたいるのだろうかと。

何時ものように店を覗きながら歩いていると、陳列のワゴンの中に男物のパンツが置いてあった。

通りすがりにチラッとビニールの袋の文字を読んだ。

「ブリーフとトランクスの快適性が合体」とのキャッチフレーズ。

ナヌナヌ、1枚300円。

この時はどんな形状のパンツだろうかと興味津々であったが、そのまま通り過ぎた。

ブリーフとトランクスが合体?

どんなパンツだろうとの思いがつのり買ってみることにした。

ほこりをかぶったパンツの袋(ビニール)を汚い物を摘まむように持って店の奥に入っていった。

「2枚500円ですね」と言って、店の中年のオッちゃんに500円硬貨を一枚渡した。

「(そのパンツ)はき心地が良いですよ」とオッちゃんが言ったので顔を改めて見ると、これが中々私好みのいい男。

スーパーでくれる白い袋を出してくれそうにしたので、「このまま(裸のまま)で良いです」と言って、店を出た。

家に帰って説明を読んだ。

<特徴>

ブリーフの圧迫感はなくやさしく包み込む設計

サポート部分は綿100%ニットで抗菌防臭加工によりいつも清潔。

ブリーフ着用時に表れる下着ラインの出ないおしゃれ下着

吸汗性に優れ、素肌(股部分)にべとつかない爽やかな履き心地

綿100% グンゼ産業(株)とあった。

ヘ〜、パンツは履くと書くのか。

私はパンツを穿くと思っていた。

まー、それは別として袋からパンツを取り出して、広げてみた。

見た目は完全なトランクス。

パンツの前は開きボタンが剥き出しに付いている。

中を見ると、金釣りの様な物が着いている。

(例えれば海水パンツの中に白い布がある感じ)

兎に角試着をしてみる。

履いて、腰までゴムを持ち上げてみた。

ヌフヌフ。アーこんな感じか。

トランクスだったら金玉がパンツの中でブラブラとしているが、このパンツの場合はしっかり固定されている。

真ん中辺りで。

まー、これはこれで良いのかも。

でも、このパンツ(製品)はヒットしなかったのだろうな。

だって、あんな小汚いデスカウントショップで売っているのだもの。

お店の開店パーティー2日目は、気心の知れたお客さん達の来店ですごく楽しかったです。