お客さんの出足が遅い。
何かすることないかなとビルの非常階段に出てみた。
そうだ、3階から上の階に上ったことがないんだ。
一回上ってみようと思い付いた。
ビルがあり、その西側に非常階段がある。
階段の三方は外にはみ出していて、外が丸見え。
人が落ちないように鉄の柵が付いている。
恐る恐る階段を上ると、隣のビルが3階とか4階なので、5階から視野が開けてきた。
北西には恵美須町の交差点が下に見え出した。
6階、7階と上った。
私の心臓はパクパク。高所恐怖症の私の心臓が高鳴ってきた。
外を見ると、天気が良いので遠くまで見える。
下を見ると人や車が小さく見える。
8階から上はどうなっているか見に行こう。
目はクラクラ。足はガタガタ。
一段一段上っていった。
ここが8階だ。
あと少しで頂上だ。屋上だと思った時、カメラが見えた。
カメラを持った腕が見えた。
誰かいると思った時、「すみません」との声。
声の主を見ると、結構ハンサムな若い青年。
私はただ「いいえ」と言って、踵を返して階段を下り始めた。
こんな所に人がいるなんてビックリ。
度肝を抜かれてしまった。
夕焼けの新世界の写真でも撮る為に、あんな所にいたのだろうか。
恐いのを辛抱して3階まで下りて店まで戻った。
高い所に上ったという恐怖心と思いがけず人に会ったという驚きで心臓はパクパクしっぱなし。
Oちゃんは「救急車を呼ぼうか」と言った。
まさかそこまでとは思ったが、30分くらい動悸が治まらなくて困ってしまった。
この時、本当に確信をした。
私は正真正銘の高所恐怖症だと。