最初のお客さんはKOちゃん。
前に勤めていた店で5、6年前に会ったきり。
お店で「スナックかけふオープン」のチラシを見て来てくれたとのこと。
「年は幾つ?」と聞くと「昨日で51になった」とのこと。
勤めは三宮なので、仕事帰りは神戸のゲイスナックで飲んでいるそうです。
Sちゃんの来店。
通勤は地下鉄御堂筋線。
車内のクーラーが効き過ぎて寒かったので、途中で降りて飲みに来たと言っていました。
Yさんの来店。
皆生温泉に行ったとのことでお土産(饅頭)を持っての来店です。
お客さんみんなに、お裾分けをして食べてもらいました。
Aちゃんの来店。
職場の人と一緒に飲みに行き、お酒を5合飲んで来たとのことでビールのオーダー。
この前“かけふ”に飲みに来た時は最終電車がなくなるまで、Aちゃんは店にいた。
タクシーで帰ると言って出て行ったのだけれども、映画館で泊まったとのこと。
朝の5時に「映画が終りました」と従業員に起こされ家に帰ったとのこと。
映画館では「何にもなかった。男がいなかった」と言っていました。
私達が店を始める前(5月)にAちゃんに会った時に、Aちゃんが言っていた。
毎週、、映画館である人と会っていた。
その人は自分のタイプ(好み)で、すごく愛している。
でも、その人が突然、映画館に来なくなってしまった。
どんな理由で来られなくなったのか分からない。
その彼の名前も、何処に住んでいるのかも、連絡先も知らない。
何故かと言えば、彼は言葉がはなせない人(聾唖者)だったから。
会話の出来ない彼と、ただただ側に一緒にいるだけで幸せだった。
今でもすごく愛していて、会えないのが辛いと言っていた。
「好きって、相手に伝えるには手話でどうしたら良い?」と聞いてきたので、このように表すんだよと、私は彼に好きという手話を教えて上げた。
でも、まだ彼とは会えていないのだろうと私は思う。
こうして“かけふ”の店に来て、なんだかんだ言いながら「最終電車がなくなってしまった」と言い、映画館に行くのだろう。
そして、来なくなった彼がひょっとして来ないかなと、待っているのかもしれない。
Aちゃんの切ない心の内が神様に伝わり、彼と再会できると良いなと私は思っている。
今夜も彼は最終電車がなくなり寂しくなった新世界を、独りで帰って行きました。
今夜も映画館に行くのかな。