中秋の名月

今夜の最初のお客さんはSちゃん。

Sちゃんは今日が60才の誕生日。

そして、定年退職の日。

退職はするけれど、月曜日からまた同じ職場に嘱託(アルバイトのようなかたち)として通う。

給料は2割りカットになるらしい。

「長い間、ご苦労さん」と、私が言うと、「だれもそんなこと言ってくれなかったなー」と、Sちゃんはしんみり言いました。

60才の区切り。

一人暮らしのSちゃんだから家に帰っても誰も待っていない。

だから労いの言葉は誰もかけてくれない。

職場の人だって、月曜日には何時もの様にSちゃんが出勤して来るのだから、特に声はかけてくれなかったのだろう。

私は心の中でもう一度言いました。

「Sちゃん、長い間、ご苦労さんでした」と。

Yさんは明るく言いました。「還暦だね。おめでとう」と。

Sちゃんは照れくさそうにニコニコしていました。

Sちゃんとは30年近く前からの知り合いです。

最初は変った人だなと思っていたかけれど、長い付き合いの中で、Sちゃんは大人しく思いやりのある人だなと思うようになりました。

Sちゃん、会社が辞めてくれと言うまで、頑張ってね。

YMちゃんとTYMの来店。

二人は大の親友同士。Hはない仲。

銭湯の話題が出た時、TYMは言いました。

「たとえ、知り合いと(YMでも)出会っても前は隠さないよ」と言って、タオルを肩にポイと振り上げて担ぎ、歩く真似をして見せました。

つまり、ゲイの知り合いがいても前を隠さずにいると、言うのです。

YMちゃんは言いました。

知り合いがいても(TYMでも)、相手の全体像は見るけれども、相手のあそこは気にならないと、言いました。

Gさんは、知り合いがいても、いなくても、何時も前を隠していると、言いました。

私は話しに参加はせずに聞いていたけれど、ゲイの知り合いがいたら、相手のあそこが気になるなー。

何とはなしに目があそこに行くだろうなーと、思いました。

また、私のあそこを見られたら恥ずかしいなーと、思いました。

帰る時にTYMちゃんの身体を、TMちゃんがすごく気付かっていました。

YMちゃんTYMちゃんは本当に仲が良いです。

私は思います。

ゲイの世界で恋人を探すのもいいけれど、本当の友人を見つける方が良いなと。

恋人同士は分かれてしまうけれど、よっぽどのことがない限り親友は離れて行かないし、一生付き合えるものね。

今夜はお客さんをお送りする度に、一階まで(外まで)お送りしました。

そして、アーケードの間から月が見えると、お客さんに言いました。

「ねーねー、中秋の名月が出てるよ」と。

みなさん、空を見上げておられました。

空に薄雲はあったけれど、本当に神々しいほど綺麗な月でした。

みんなが幸せになると良いな〜と、願いつつみなさんをお送りしました。

明日は満月。

明日も月が見えると良いなー。