Tさん、お待ち致しております。

モーニングを食べに行きましょうとAさんから電話があった。

Aさんは四天王寺のお太子さんの日(21日)の露店に古いレコードを買いに来られる。

その時に私の家に電話があるのである。

そして一緒に喫茶店に行き、モーニングを食べた。

AさんとOちゃんは競馬の話をしていた。

夕方から出かけて、開店挨拶のお店回りをした。

2軒行き、3軒目の予定の店Iがない。

あれ、この辺にあったはず。探すが見当たらない。

仕方が無いので後ましにして次の店に行った。

あれ、まだ開いていない。ドアが閉まっている。

次の店も閉まっている。

それならと、南に挨拶回りに行った。

土曜なのにまだ開いていない。

南をウロウロしている間に、やっと1軒開いたので行った。

次の店は中々開かない。

歌舞伎座の前で時間をつぶし7時まで待って店を見に行った。

まだ、店に誰も来ない。

仕方が無いので新世界にまた戻って何軒か挨拶回りをした。

そして、お店の人にIの店はどうなりました?と聞いたら、Iの店は閉めたとの事。

幾ら探してもない筈だ。

今日の挨拶回りは順調にいかず本当に疲れてしまった。

Oちゃんはボトルをリュックで担ぎ、袋に入れたボトルを下げっぱなしだったので私よりもっと疲れただろう。

Oちゃんは小言も言わずに歩き回っていた。

Oちゃん、今日は本当にご苦労さんでした。

今日の朝、Tさんに電話を入れた。

Tさんは確か私より歳は一つ上のはず。

歌がメチャメチャ上手な人で高音の伸びも良く聞き惚れてしまうほど。

店では何時もニコニコされていた。

Tさんには私の自宅の電話番号を教え、Tさんにも電話番号を教えてもらっていた。

TさんはスナックMに月一位の間隔で飲みに来て頂いていた。

通天閣の歌謡劇場に歌を聞きに来られ、その帰りにスナックMに寄ってもらっていた。

Tさんにとって、スナックMは歌謡劇場のついでに寄ってもらっているついでの店であろうなと思っていた。

私達がスナックMを辞めることが急に決まり、Tさんには知らせることが出来なかった。

私達が店を止めてから間のない頃の夜、Tさんから電話が頂いた。

「今、扇町を歩いているの。何故店を辞めたの?」と泣き泣き電話を頂いた。

本当に涙声で「何故辞めたの?」と聞かれた。

私達は本当にビックリした。

Tさんは私達がやっていたスナックMを愛して下さっていたのだなと。

その時は「ごめんね」と言って電話を切った。

電話をもらってから約10ケ月。

私はTさんに今日の午前中に電話をした。

でも、留守だったので留守電に入れた。

「6月2日より店をやります。宜しくお願いします」と。

そして、夜に電話を頂いた。

「行きます」と。私もOちゃんも大感激。

一所懸命、コツコツと店をやっていたら、店を愛してもらえることが分かった。

これからも不器用ながら一所懸命に、正直に店をやっていこうと思った。